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アンドロゲン補充療法は、男性ホルモン値の低下によって生じる病気に対する治療法です。注射薬や塗り薬で、男性ホルモン(テストステロン)を補充します。

このページでは、40歳以上の男性に多く発生すると言われている男性更年期障害にフォーカスを当て、アンドロゲン補充療法を解説。具体的な治療方法や効果、副作用についてまで幅広く触れていきます。

「若いときのように活発に動きたい」と感じている男性は、ぜひ参考にしてみてください。

男性ホルモンを補うアンドロゲン補充療法

アンドロゲン補充療法とは、男性更年期障害などの改善を目的に、男性ホルモンを補う治療法です。男性ホルモン補充療法とも呼ばれます。加齢で衰えるテストステロンの分泌を、薬剤によって補います。高齢者の健康増進や生活の質の向上が期待できるのです。2000年以降、男性のホルモン補充療法や男性更年期障害といった言葉も、広く認知されてきています。

アンドロゲン補充療法は男性更年期障害に効く

アンドロゲン補充療法を行えば、男性更年期障害の症状が改善されます。さらに、成人病の発症率も下げられるのです。アンドロゲンを続けて補充することで、体内を男性ホルモンを作りやすい環境に整え、男性更年期障害からの回復が見込めます。

男性更年期障害の諸症状が改善する

アンドロゲン補充療法は、男性更年期障害の症状を改善させます。性機能や肉体機能の改善から、うつ状態といった精神面の回復など、身心ともに効果を発揮するのです。男性更年期障害の症状は、下記の通りです。

【男性更年期障害の症状】
身体的症状
  • 筋力の低下及び筋肉痛
  • 疲労しやすい
  • 発汗
  • 頭痛・めまい・耳鳴り
  • 性機能の低下
  • 頻尿
  • 肥満
  • 骨減少症
  • 骨粗鬆症
精神的症状
  • うつ
  • 疲労感
  • 知的好奇心の低下
  • 集中力の低下
  • 記憶力の低下
  • 短気
  • 不眠
  • 性欲の減少

アンドロゲン補充療法の具体的な効果は、性機能と性欲の上昇、そして筋力と筋肉量の増加です。また、骨形成を促進し、骨の密度も増やします。他にも、体脂肪を低下させ、総コレステロールと悪玉コレステロールを減少させるなどの効果もあるのです。これらの効果から、表にある男性更年期障害の諸症状が改善されます。

自力で男性ホルモン値を戻せるようになる

アンドロゲン補充療法を行うことで、活動意欲が高まり、自力で男性ホルモン値を上げられる体内環境を作れます

男性更年期障害になると、疲労を感じやすくなり、物事への執着も希薄になります。行動意欲も低下し、肉体も衰えていってしまうので、より一層、男性ホルモンが生まれにくくなってしまうのです。アンドロゲン補充療法で男性ホルモン値が回復すれば、活動意欲や運動意欲が高まり、能動的に活動できるようになります。意欲をもって活動すれば、男性ホルモンが作られやすい体内環境も整うのです。アンドロゲン補充療法によって、男性ホルモンが自然と増える状態ができあがります。

アンドロゲン補充療法が受けられる条件

アンドロゲン補充療法は、更年期障害の症状が出ている40歳以上の男性が受けられます。具体的な条件は、血中遊離型テストステロン値が11.8pg/ml未満の患者が治療の対象となるのです。

【血中遊離型テストステロン値の比較】

  • 20代男性の平均値
    • 16.8pg/ml
  • 男性更年期障害の治療対象値
    • 11.8pg/ml未満

血中遊離型テストステロン値は、血液の中にあるテストロンの数値で、男性更年期障害の診断基準です。血中遊離型テストステロン値が11.8pg/ml未満という数値は、20代男性(平均16.8pg/ml)の7割程度です。

アンドロゲン補充療法が受けられない条件

血液中のテストステロン値が規定未満でも、アンドロゲン補充療法を行えない場合があります。代表的な例を挙げると、前立腺がんを患っている人や、重度の肝機能・腎機能障害を患っている人などです。その他にも、症状が悪化する可能性がある疾患があります。

【アンドロゲン補充療法が受けられない疾患】

  • 前立腺がん
  • 中等度以上の前立腺肥大症
  • 乳がん
  • 多血症
  • 重度の肝機能障害
  • 重度の腎機能不全
  • うっ血性心不全
  • 重度の高血圧
  • 夜間睡眠時無呼吸

アンドロゲン補充療法に用いられる薬剤

アンドロゲンを補充する方法は注射や塗布です。健康保険が適用される注射薬や、薬局やドラッグストアでも購入できる塗り薬を紹介します。

エナント酸テストステロン注射

エナント酸テストステロンは、アンドロゲン補充療法の第一選択薬とされています。治療の間隔は、2週間から4週間に1回です。10回を1クール(5か月~9か月)としています。1クール終了後は、1か月ほどの期間を置いて、再びホルモン状態の検査を行うのです。テストステロン値が回復に向かっていれば、漢方薬やサプリメントなどの治療に移行します。進んでいなければ、アンドロゲン補充療法をもう1クール行うのです。

2018年現在、アンドロゲン補充療法では、エナント酸テストステロン注射のみ保険が適用されています。しかしエナント酸テストステロン注射は、血栓塞栓症などの治療でワルファリンカリウム等の抗凝血剤を服用していると、使用できません。

胎盤性性腺刺激ホルモン(hCG)注射

hCG注射薬は、血栓塞栓症などの治療で抗凝血剤を用いており、エナント酸テストステロ注射薬の使用が難しい場合に用いられるのです。hCG注射薬を使った治療法では、週に1回から2回は注射を打たなければなりません。エナント酸テストステロンと比べると頻繁に病院へ行く必要があるので、手間がかかる治療法です。また、保険適用外の医薬品であるため、費用がかさみます。

男性ホルモン軟膏

男性ホルモン軟膏を使えば、薬を肌に塗り込むだけで、アンドロゲン補充療法が行えます。軟膏治療は、注射治療に比べて効果は劣るものの、患者自身が手軽に処置できるという点で、注射より優れています。軟膏は陰囊(いんのう)やあごの皮膚に用います。

男性ホルモン軟膏には処方せん薬はありません。大東製薬工業株式会社から、市販薬が販売されています。薬局やドラッグストアで購入できます。ただし、前立腺疾患の患者が軟膏を使うと、症状が悪化する可能性があるので注意が必要です。

アンドロゲン補充療法の副作用

アンドロゲン補充療法は、薬剤によって男性ホルモンを補充するため、多血症などの副作用を引き起こす危険性があります。アンドロゲン補充療法の副作用である、多血症や前立腺疾患の悪化、体毛の増加や頭部の脱毛についても見ていきましょう。

多血症

アンドロゲン補充療法により男性ホルモンが増えると、アンドロゲンの造血作用により、多血症になる可能性があります。

多血症とは、赤血球が異常に生産される病気です。主な症状は、疲労感や脱力感、頭痛などが挙げられます。多血症になると、血管が詰まってしまう血栓症を併発させるのです。血栓症は、心臓発作や脳卒中を引き起こします。アンドロゲン補充療法を行いつつ多血症を避けるためには、普段から水分を多めに摂りましょう。それでも防げない場合は、瀉血(しゃけつ)や献血などで血液を抜きます。

前立腺疾患の悪化

アンドロゲン補充療法によって、前立腺疾患が悪化する可能性があります。男性ホルモンは、前立腺がんを進行させたり、前立腺を増大させたりするのです。日本泌尿器科学会では、前立腺疾患を患っている人にはアンドロゲン補充療法は行えないとしています。市販の軟膏でアンドロゲン補充療法を行う場合は、事前に病院で前立腺疾患がないかの確認を行いましょう。

多毛・頭部の脱毛・にきび

アンドロゲン補充療法の副作用には、体毛やにきびの増加、頭髪の減少などがあります。いずれの症状も、男性ホルモンが増えることで起きるのです。体毛の脱毛や頭髪の増毛などを行っている場合は、施術や治療に支障が出る可能性があります。アンドロゲン補充療法と併行できるか、医師と相談しましょう。

アンドロゲン補充療法まとめ

アンドロゲン補充療法は、男性ホルモンを補充する治療法です。男性更年期障害の治療に用いられます。アンドロゲン補充療法は、男性更年期障害の諸症状を治します。治療を継続することで、男性ホルモン値を上げられる体内環境も整います。

注意すべき副作用は、多血症や前立腺疾患の悪化です。男性ホルモンの作用で、体毛が濃くなったり、頭部に脱毛症状があらわれたりします。

参考文献・参考サイト

EDの用語集「アンドロゲン補充療法」は、以下のサイトや資料を参考に作成しました。